| 2009 |
| 02,26 |
«眠りの森にて»
「触らないで」
静かに、しかし明確な意思を持って響いた声に雲雀は眉を上げた。声は女のものだった。
「骸さまは眠っているの。起こしては駄目」
ソファの前に佇む雲雀を見とがめた女はその隻眼で咎めるように見つめてくる。その姿には雛を守る親鳥の必至さも神に仕える修道女の盲目さも見いだせない。しかし根本にあるものは同じようにも思われた。
「駄目。駄目よ。貴方では駄目」
歌うようにそう告げる女に本気で雲雀を止める気があるようには思えなかった。ただ歌い、見つめてくるばかりでその場を動こうともしない。言葉はどこか投げやりで、しかし雲雀への拒絶ばかり伝えてくる。
雲雀に命令しておきながら、怯えるでも牙を剥くでもない女の様子が不快で思わず眉を寄せる。そもそも雲雀はこの女が嫌いだった。否、苦手と言った方が正しいかもしれない。草食動物でも肉食獣でもない雰囲気はどこか植物のようで、雲雀は女を扱いかねていた。
「………」
黙ったままの雲雀をどう思ったのかは定かではないが、女は再びその濡れた唇を開いた。
「貴方が起こしては駄目よ。骸さまを起こせるのはボスだけだもの。骸さまに触れていいのはボスだけよ」
その物言いに雲雀は怒るよりも呆れてしまった。女の声はそれまでの無機質な様子とは打って変わって、その名を呼ぶ時だけ甘やかに響いた。静かな湖面のようだった表情は今は蕩けるような笑みが浮かんでいる。幸福に彩られたそれはどこか狂人のそれにも似ていた。
ああ、この女は己の主人を眠り姫とでも思っているのだろうか!
願わくば茨になりたいとそう思っているのだろうか。
雲雀からすればソファに沈み込んでいる男も、こちらを見ているようでまるで見ていない女もどちらもただの人間だった。
おとぎ話などにはなりやしない。
だから
「知らないよそんなの」
言い捨てるなり歩を進めて、いまだ眠りつづける男を蹴り起こした。
「おはよう、骸」
不機嫌にかえってきた声に雲雀は気分が良くなった。
雲雀さんとクローム。
このクロームはツナ骸派。雲の人のことは普通に嫌い。
ていうか雲のひとっていう呼び方萌える。紫の薔薇のひと的な。
静かに、しかし明確な意思を持って響いた声に雲雀は眉を上げた。声は女のものだった。
「骸さまは眠っているの。起こしては駄目」
ソファの前に佇む雲雀を見とがめた女はその隻眼で咎めるように見つめてくる。その姿には雛を守る親鳥の必至さも神に仕える修道女の盲目さも見いだせない。しかし根本にあるものは同じようにも思われた。
「駄目。駄目よ。貴方では駄目」
歌うようにそう告げる女に本気で雲雀を止める気があるようには思えなかった。ただ歌い、見つめてくるばかりでその場を動こうともしない。言葉はどこか投げやりで、しかし雲雀への拒絶ばかり伝えてくる。
雲雀に命令しておきながら、怯えるでも牙を剥くでもない女の様子が不快で思わず眉を寄せる。そもそも雲雀はこの女が嫌いだった。否、苦手と言った方が正しいかもしれない。草食動物でも肉食獣でもない雰囲気はどこか植物のようで、雲雀は女を扱いかねていた。
「………」
黙ったままの雲雀をどう思ったのかは定かではないが、女は再びその濡れた唇を開いた。
「貴方が起こしては駄目よ。骸さまを起こせるのはボスだけだもの。骸さまに触れていいのはボスだけよ」
その物言いに雲雀は怒るよりも呆れてしまった。女の声はそれまでの無機質な様子とは打って変わって、その名を呼ぶ時だけ甘やかに響いた。静かな湖面のようだった表情は今は蕩けるような笑みが浮かんでいる。幸福に彩られたそれはどこか狂人のそれにも似ていた。
ああ、この女は己の主人を眠り姫とでも思っているのだろうか!
願わくば茨になりたいとそう思っているのだろうか。
雲雀からすればソファに沈み込んでいる男も、こちらを見ているようでまるで見ていない女もどちらもただの人間だった。
おとぎ話などにはなりやしない。
だから
「知らないよそんなの」
言い捨てるなり歩を進めて、いまだ眠りつづける男を蹴り起こした。
「おはよう、骸」
不機嫌にかえってきた声に雲雀は気分が良くなった。
雲雀さんとクローム。
このクロームはツナ骸派。雲の人のことは普通に嫌い。
ていうか雲のひとっていう呼び方萌える。紫の薔薇のひと的な。
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